2025年11月 外国送金のフォーマットがISO20022へ移行!

会計システムではどのような対応が必要? 経理担当者が確認すべきポイントを徹底解説


1.はじめに

グローバル化が進展するなか、銀行のネットワーク経由で海外の拠点や取引先などに送金する場面が増えていますが、
外国送金に伴うフォーマットが2025年11月までに新たな統一フォーマットの国際標準規格であるISO20022へ移行します。

この変更に伴い企業側では通信や回線など検討事項は多岐にわたりますが、本コラムでは外国送金フォーマットのデータ授受に密接に関連する会計システムと利用部門である経理部門にフォーカスして解説します。

2.新しい外国送金フォーマットISO20022とは?

外国送金の国際標準フォーマット(ISO20022)

ISO20022とはデータフォーマットの共通化・標準化を目指す国際規格で、共通フォーマットとして世界各国で採用が進められています。
国ごとに異なっていた現行フォーマットと比べ、取引に関わる情報をシステム処理に適した形で統一化することで決済処理の迅速化が可能となります。また、IOS20022では送金に関わる項目や文字数も拡充されるため、マネーロンダリング対策にも寄与できると期待されています。

これまでの外国送金では、企業と銀行間のデータ授受には 固定長形式のMTフォーマット が用いられていましたが、今後は国際標準規格のISO20022に準拠したXML形式の新フォーマットに完全移行されますで、各企業もこのフォーマットに合わせて 外国送金データを作成しなければなりません。

移行に対応しなかった時のリスク

2025年11月の移行期限までに対応が間に合わなかった場合、電子データによる外国送金はできなくなり、銀行によっては担当者が銀行窓口に赴いて振込用紙へ起票するケースが発生します。そのため、煩雑な手続きを踏まなければならない点に加え、効率的でタイムリーな取引ができないリスクが生じます。

3.ISO20022への移行に伴う経理部門への具体的な影響

外国送金のデータ作成は企業側の責任範囲であり、多くの場合、その処理は経理部門の担当者が会計システムを利用して行っています。
その点では、外国送金フォーマットの変更に際して最も大きな不安を感じているのは、経理部門の担当者ではないでしょうか。

新旧フォーマット混在期、完全移行後で影響を受ける業務

新旧フォーマットの混在期と完全に移行した後とで、それぞれの期間における業務の棚卸を行わなければいけません。

フォーマット混在

まず、フォーマットが混在している間ですが、2025年11月の完全移行までの期間は従来通り固定長での送金依頼が可能です。

ただし、相手先から新フォーマットに適応する項目※1を求められた際は利用している会計システムに依存しますが、送金データの出力において改修が必要となるなど個別の対応が発生するケースがあります。

次に受取る企業側ですが、海外の拠点や取引先から新フォーマットで送られてきても混在している期間は銀行側で旧フォーマットに変換してくれるケースが多いので、それほど大きな問題にはなりません。

※1 送金依頼人・送金受取人・受取銀行の住所情報の構造化と細分化など

完全移行後

一方で、2025年11月以降の新フォーマットへ完全移行後ですが、暫定措置は終了しているため、送る側と受取る側ともに各企業で授受できるようにしなければなりません。

経理部門への影響と対応

データ項目差異の確認

旧フォーマットと新フォーマットであるISO20022の間では、データ項目に下記のような差異が発生することがあり、送金データを作成する経理部門の方はその差異を整理しなければいけません。

具体的には銀行・口座情報関連ではSWIFTコード※2やIBANコード※3、また送金の目的については貿易、仲介貿易または貿易外取引、規制報告関連では原産地・船積地・仕向地など、従来よりも細かく記載する必要がでてきます。

つまり、取引先によっては新たな項目の追加や細分化など、今後さまざまなリクエストが寄せられることが予想されます。

※2 銀行間通信網(SWIFT)において銀行を特定するコードで、8桁または11桁のアルファベットと数字で構成
※3 銀行口座の「所在国、銀行名、支店名および口座番号」を特定するための国際規格コード

加えて、受領した送金データを受けて仕訳や消込などの処理を行っている場合、それらの後続プロセスについても、経理部門サイドで見直しを行っておく必要もあります。

ここで考慮すべきは、取引している相手先の数が多ければ多いほど、経理部門の負担が増していくことです。

企業におけるリスク管理で最も優先すべきは、フォーマット移行後も誤送金などのミスを決して起こさないことにあります。そのためにも経理部門が慌てて対応することがないよう、できる限り負担を軽減することが重要です。

4.会計システムで検討すべき対応内容とは?

では、フォーマット変更に伴い密接に関連する会計システムについてですが、現在の運用によって対応方法が異なります。

自社スクラッチ開発のシステムを利用している場合

自社スクラッチのため、新フォーマットに対応するための改修も自社で一から進めなければいけません。完全移行の直前になって追い込まれることがないよう、経理部門と情報システム部門、また関連するSIerとしっかり協議したのち、余裕をもった計画を策定してスケジュールを調整することが重要です。

ERPなどパッケージ製品を利用している場合

ERP開発ベンダーや販売代理店に今後の方針や状況の確認を行うことを推奨しています。
ベンダー側からの回答を踏まえてパッケージ内の対応で移行できるのか整理を行い、調査した結果によっては他パッケージ製品へのリプレースも検討することになります。

一方で現行のパッケージの中身には手を入れず、フォーマット変換プログラムを外側に 作成してアドオン開発するといった対処も考えられますが、システムが複雑化したり、即時性が失われたりするおそれがあるので、ご留意ください。

ISO20022に対応した会計システムにするためには、要件の洗い出しから該当する機能の改修、またテストの期間 を踏まえると少なくとも半年程度を要すると考えられます。 このリードタイムを見越したうえで、経理部門が余裕をもって対応できる準備期間を設けることが肝要です。

完全移行後も誤送金などを決して起こさないことに加え、会計システムの透明性を維持し、将来にわたるメンテナンス性を確保するためにも、一時しのぎではない恒久的な対応を行っておくことが原則となります。

5.さいごに

今回のフォーマットの移行で単純にデータ形式のみの変更であれば、情報システム部門主幹で 会計システムの微修正でカバーできますが、取引先数や業務内容により影響範囲はそれだけにはとどまりません。

外国送金を実業務で行っている経理部門では影響範囲を鑑みつつ、場合によっては業務の見直しや関係者との調整が発生するケースも出てきます。

国産ERPパッケージの「Biz∫(ビズインテグラル)」では新フォーマットであるISO20022への移行に際してお客様側に煩雑な手間をかけることなく、誤送金などのリスクも最小限に抑えた形でスムーズに対応できるよう準備を進めています。

実際にBiz∫をお使いいただいているユーザー様からも、「国際標準フォーマットのISO20022に対応するパッチは提供されますか?」、「早期に影響範囲を確認しておきたいと考えており、対応状況や設計情報などを提供してもらえますか?」など、お問い合わせをいただいております。これらのお声に対しERP開発ベンダーとして今後の予定などをお伝えしつつ、継続した情報発信も行っています。

さいごに、新フォーマットへの移行に伴い、考慮すべきポイントが様々ございますので制度を確認しつつ、お客様で検討する際は上記を参考にしていただければ幸いです。
また、外国送金フォーマットの変更を機に、既存システムの見直しを行いたいとお考えの方や、弊社でご支援できることがありましたら、是非お声がけください。