~大手総合住宅メーカーの経理改革成功の源 グループ30社のシェアードサービスを支える統一会計システム~
ミサワホーム株式会社は、住まいと暮らしをトータルにサポートする業界トップクラスの総合住宅メーカーです。「企画力」、「技術力」、「デザイン力」に定評があり、市場ニーズに応える商品を業界に先駆けて開発し、確かな実績を積み上げてきました。例えば、同社が考案した大収納空間「蔵」のある家や、世界初のゼロ・エネルギー住宅の発売のほか、27年連続でグッドデザイン賞も受賞しています。
近年では、主力の戸建住宅事業だけでなく、介護付有料老人ホーム「マザアス南柏」をはじめとした介護施設や保育施設の設計・建設などのライフサポート事業、リフォーム事業、資産活用事業、不動産事業と幅広く取り組み、同社のコーポレートスローガンである「住まいを通じて生涯のおつきあい」を実現しています。
ミサワホームは、全社的な構造改革を進める中で、経理財務領域では「Biz∫」会計をベースとした「統一会計システム」を導入し、本社並びにグループ会社の経理業務の一部を、新たに立ち上げたシェアードサービスセンターに集約しました。全社にシェアードサービスを提供することで、業務の効率化やコスト削減が可能となり、業務品質の向上とガバナンス強化を実現しています。
「統一会計システム」導入に至るまでの経緯とシェアードサービスの活用状況について、伺いました。
目次
導入前の課題と効果
導入前の課題
- グループ全体で経理業務の効率化ができていない
- 決算時の業務負荷が高い
- 既存システムの保守期限が近づいている
導入効果
- 業務の標準化・集約化・外部化(BPO)により業務効率化と品質向上を実現
- 決算時の業務負荷低減(残業時間を半減)
- クラウド上に新システムを構築。
- TCO削減とともにシェアードサービスに適した柔軟性を確保
導入背景
「統一会計システム」導入に至った経緯を教えてください。
在川様
少子高齢化、消費増税に伴う消費低迷など、住宅業界を取り巻く市場環境は厳しさを増しております。当社ではさらなる競争力を高めるべく、リフォーム事業、資産活用事業、不動産事業などストック関連事業への積極的投資により「事業の多角化」を進めています。同時に、固定費を圧縮し利益を生み出すための組織へと変革を目指す「構造改革の実現」が重要な経営課題です。
これらの解決策として、ミサワホームグループ会社間で重複している会計業務を一拠点に集約し一元管理する「シェアードサービス」導入を決定しました。狙いは、大量処理業務及び専門性の高い業務処理を実現し、業務コストを削減するとともに業務品質を向上させることにあります。
シェアードサービスを全社展開するためには、各社共通のシステム基盤が必要です。しかしながら、当時利用していた会計システムは、ミサワホーム本体の業務に合わせてスクラッチ開発されたものであり、グループ全体としての効果を最大化するためには、業務を標準化し統一されたシステムが必須でした。また、約20年間利用し更新時期を迎えていたという問題も重なりました。
グループ会社においても、業務フローが各社で異なっていたため、自社のやり方に合わせるためにシステムのカスタマイズや機能追加が独自に行われていた実態があり、個社単位の部分最適から全体最適へと早急に舵を切る必要に迫られていたのです。
そこで、ミサワホームグループの業務改革の一環として新設した専門組織「業務改革推進部」が旗振り役となり、「統一会計システム」構築からシェアードサービス導入・運用を推進する全社プロジェクトが発足しました。
システム一元化にあたっては、業務を標準化することで、最終的にコア以外の業務をアウトソーシングできるような仕組みを実現し、業務コストの削減や事業多角化への対応を目標として掲げました。
「統一会計システム」に「Biz∫」会計を採用した理由を教えてください。
在川様
従前の「業務に合わせてシステムを作り込む」のではなく、「システムに業務を合わせる」ことを優先し、会計パッケージをベースに複数社を比較検討しました。
「Biz∫」会計は、他社パッケージに比べ必要な業務機能がカバーされており、既に導入を決めていたワークフロー「intra-mart」とのスムーズな連携が可能であり、シェアードサービスへの展開に適していた点を大きく評価しました。
システムパートナーにはNTTデータCCSを選ばれましたが、どういう点を評価されましたか。
在川様
このような大規模なプロジェクトを計画通り円滑に進めるには、パッケージの性能はもちろんですが、信頼のおけるシステムパートナーの協力が必要不可欠だと考えていました。その点、NTTデータCCSは20年来の取引実績があり、当社の会計業務に精通し、「あうん」の呼吸でコミュニケーションできることを高く評価しました。
インフラ環境の刷新にあたっては、従量課金制でリソースの追加・削減が容易なAWS(Amazon Web Service)を利用したクラウド基盤上での稼動を決定したのですが、当時はクラウド導入に消極的なベンダーもいた中で、NTTデータグループの高い技術力にも期待していました。
プロジェクト概要
「統一会計システム」構築からシェアードサービス導入に至るまでの流れを教えてください。
小山様
業務改革推進部の部門長がプロジェクトリーダーとなり、トップダウンで工程を区切って全社を挙げて取り組みました。
はじめの「企画フェーズ」では、シェアードサービス導入を前提として、現行の業務分析と業務設計を半年がかりで行いました。具体的には、ミサワホーム本体と販売子会社のヒアリングなどを通じて業務にかかる工数や業務プロセスの調査を行い、「シェアードサービスセンター(以下、SSCと略す)ではどのような業務を行うか」、「システムをどのように利用してもらうか」など現場とSSCとの業務の切り分け、シェアードサービスとして切り出す範囲の定義づけを行い、業務標準化のための主要タスクを成果物としてまとめました。
次の「標準化フェーズ」では、主要タスクを元に、シェアードサービス導入後に大量処理が想定される9大項目(例えば、お客様専用口座の導入、自動入金処理など)を中心に、1年間本体及び販売子会社の業務の標準化を行いました。
旧システムを利用して標準化を行い、システムが切り替わっても同じスキームで業務が遂行できるよう、Fit&Gapを進めながら業務の手順などをマニュアル化し各社に展開しました。
続く「移行フェーズ」では、ミサワホーム本体を皮切りに、グループ会社への「統一会計システム」導入を開始しました。 全社展開する前に、まずは首都圏4社をモデルケースとして首都圏にSSCを置き、シェアードサービスを試験的にスタートさせました。首都圏4社を対象とした狙いは2つあります。1つは、比較的規模が大きい4社でのトライアルによる問題の洗い出し、そして、人材の確保です。遠隔地転勤を伴わずSSCに通いやすい点を考慮しました。
首都圏地区でのシェアードサービス試験導入の結果は如何でしたか。
小山様
標準化が不徹底だったため、シェアードサービスがうまく機能せず、運用部門に迷惑をかけることになってしまいました。この経験で得た教訓は「業務の標準化は、細部に至るまで徹底的に詰めていないと決して上手くいかない」でした。
解決策として、導入前と導入後の2回にわたって標準化判定テストを実施することとしました。入金から年度決算までの全業務について、業務フローに沿って細かい業務単位で書き出してマニュアル化し、業務総括表に基づき1項目ずつ〇×をつけて合格判定することで、徹底的に問題をつぶしました。
試験導入を経て、全国グループ会社にどのような手順で展開しましたか。
小山様
「導入フェーズ」において、残りのグループ30社を4つのグループに分け、段階的に導入しました。 導入期間は1社あたり平均約5カ月間。ここでは、先の首都圏地区での経験が大いに役立ちました。
導入前後のフォローアップとして、各社の現場部門向けのFit&Gapを3回ずつ、全従業員約10,000人に向けたシステム説明会を計3回ずつ行いました。その頃は、毎日のように全国各社を飛び回っている状況でしたね。
全国導入後に、2カ月間かけて「機能別」のチームに移行しました。「機能別」チームとは、4つの業務(入金、出金、債務、基幹)別に編成された組織で、「担当者全員が同じ処理を同じ品質レベルで業務を遂行する」ことが狙いです。このようにして大量処理を行う体制を構築しました。
現場からの反発もあったかと思いますが、どのように対処されましたか。
小山様
従来の業務のやり方を変えることに対する抵抗は大きく、各社との交渉や調整では何度も議論しました。会社の規模や成り立ちも違うため、さまざまな不満や要望がでました。トップ層からプロジェクトの意義、目的やメリットを説明するなどして理解いただくよう努めました。自分自身も会計業務に携わっており、現場の困りごとがよく理解できたので、対応策を一緒に考えることができたことは大きかったと思います。
また、シェアードサービス導入初期には、各社の経理担当から「SSCで伝票処理を直接行うようになってから、自社の決算数字が見えづらくなった」との不満の声が上がりました。これについては、見える化ツールを作るなどして対応しました。 新しい運用が定着し始めると、業務の削減効果が目に見えて明らかになり、次第に理解を示してくれるようになりました。
業務の品質を上げるための工夫をお聞かせください。
小山様
先述したとおり、「機能別」チームでの業務別の大量処理により業務の効率化が大幅に進みました。一方でSSC内の業務品質はマンパワーに依存しており、内部統制面でも課題となっていました。
そこで、「安定化フェーズ」にて「ブロック別」の組織を新たに編成し、各社毎の数字の可視化を行いました。ベテランの次長クラスをブロックリーダーに任命し、4~5人のチーム体制で各社の決算数字を見る体制を構築しました。このことにより、「機能別」と「ブロック別」の縦横軸での「見える化」が実現し、業務品質の安定化に役立ちました。 さらに、SSCでの業務改善活動や好事例を共有する仕組みを設けました。若手が中心となった改善活動や発表会により、ブロックを超えた情報共有が自発的に行われるようになり、品質向上につながっています。これらを評価制度に組み込むことで、SSCで働く従業員のモチベーションの維持にも努めております。
導入効果
シェアードサービス導入による効果をお聞かせください。
在川様
今後は、財務会計だけでなく管理会計のシェアードサービス化に着手したいと考えます。グループ会社のニーズに対応した経営情報を提供していきたいです。
そのためには、決算の早期化が必須です。 現在、月次や本決算を2週間前倒しし、見込み数字をより速く各社に提供できるよう進めています。現場部門の協力の元、早期実現に向けてチャレンジしています。
また、BPOをさらに進めたいですね。既にSSCの一部の業務を切り出して、海外の複数社に委託していますが、順次切り出していければと考えます。
他の基幹業務のシェアード化も合わせて進めておられますね。
在川様
財務会計、人事給与、総務、設計の4つを柱として、シェアード化を進めています。人事給与については財務会計と同時期に展開しており、総務では営業車のリース化、設計については図面作成業務のBPOなど、グループ全体でさらなる業務コストの削減を目指しています。
シェアードサービス導入を検討されている企業に向けて、アドバイスをお願いします。
在川様
業務の標準化の徹底」と「現場の協力」が成功のカギだと思います。そのためにはトップダウンで業務改革の意義を一貫して伝え続けること、強いリーダーシップが欠かせません。
ミサワホームグループの業務改革は道半ばであり、これからもグループ一丸となって課題に取り組んでいきたいと考えております。
業界トップクラスの御社の先進的な取り組みは益々注目されています。本日は貴重なお話をありがとうございました。
導入パートナからの一言
ミサワホーム様は、業務改革への揺るぎない意志を一貫して持ち続けておられました。
ご提案にあたっては、ミサワホーム様の業務に精通している強みを活かし、「Biz∫」の活用イメージや標準機能とのFit&Gap実施方針などをご説明し、お客様の不安を取り除くことに努めました。
全国規模のシェアードサービス展開やクラウド基盤でのシステム稼働など、当時としては先進的かつ大掛かりなプロジェクトでしたが、「Biz∫」、「intra-mart」というNTTデータグループの製品力とシステム構築ノウハウを結集してサポートしました。期間中は何度も議論を交わさせていただき、発生した問題点についてはその都度協議し、進め方など何度も相談に乗っていただきました。ミサワホーム様のリーダーシップと実行力が成功の要因であったと感謝しております。
これからも、ミサワホーム様の業務改革への果敢な挑戦をITサービスの側面から支えていきたいと考えております。
シェアードサービスの導入をご検討されていらっしゃるお客様は、ぜひお声掛けください。
会社概要
会社名 | ミサワホーム株式会社 |
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代表者 | 代表取締役 竹中宣雄 |
設立 | 平成15年8月1日 |
資本金 | 11,892,755,813円 |
事業内容 |
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導入事例資料
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