Biz∫販売・販促・MDMで継続的な業務改善を支える基幹システム刷新を実現
目次
2016年から新システムが稼働
日清オイリオグループ株式会社は、日清製油、リノール油脂、ニッコー製油の3社を母体に誕生しました。
同社では、合併にあたり基幹システムを外資系ERPパッケージで構築。10年以上にわたり運用していましたが、システムライフサイクル対応をきっかけとして基幹システムの大幅な再構築を決断し、2014年5月に開始したのが「基幹システム最適化プロジェクト」でした。
JSOLはプロジェクトにおいて、販売管理と販売促進、マスター管理の3領域を担当。具体的なソリューショとして提案したのが、NTTデータ・ビズインテグラルが展開するERPパッケージ「Biz∫(ビズインテグラル)」を構成する「Biz∫販売」「Biz∫販促」「Biz∫MDM」の3つのパッケージソフトウエアでした。
2016年4月から稼働を始めた新システムは大きなトラブルもなく業務を支え、さらなる改善を利用部門と進めています。
日清オイリオグループのプロジェクトマネジャー(PM)を務めた関口和洋氏(現・情報システム部長)は、「まだ十分に使いこなせていない機能もあり、教育研修のあり方も含めシステム定着に努力したいと考えています。2016年暮れにはJSOLの支援も終了しており、いよいよ私たち自身がBiz∫を最大限に使いこなすためのステージに入っています」と語ります。
一連のプロジェクトでJSOLとNTTデータ・ビズインテグラルが提示した「業務最適化に資する仕組み」とはどのようなものだったのか。そこから浮かび上がるのは、お客さまの業界について深く理解し、確実な業務とその効率化を促すシステムをお届けする高いプロジェクト遂行能力です。
業務とシステム改善点は150要件。業界慣行への柔軟な対応も
他の食品メーカーと同様に、日清オイリオグループでも平日の午前中は当日出荷分の受注・出荷処理が集中します。競争が激しい日本市場において、僅かな遅れやミスが、在庫、物流費用などのコストの増加やお取引先への悪影響につながるため、担当者には緊張した時間が流れます。またEDI、FAX、他システムからのさまざまな種類の注文を確実に受注処理し、在庫を引き当て、品切れがあれば調整し、出荷指示を出さなければなりません。これらを確実に処理するためには、システムが確実に稼働するだけでなく、利用者にとっての利便性にも配慮する必要があります。
今回のシステム更新について関口氏は、「ライフサイクル対応がきっかけだったとはいえ、利用者の利便性のいっそうの向上と業務の効率化やお取引先要望のシステム化対応を目標として掲げ、業務とシステムの両面から改善点をまとめていきました」と語ります。
食品業界には、他の業界にはない商慣行がいくつかあり、細やかな対応が求められます。例えば賞味期限に絡むもの。商品や得意先毎に賞味期限日からの出荷許容日数や日別管理・月別管理などの管理要件が細かく異なっており、システム的にはマスターデータと業務機能の的確な連動が必要です。
また帳合管理に絡むものもあります。帳合ルートに応じた値引き・割戻し、伝票処理などの複雑な商物流があり、これらにも正確に対応しなくてはなりません。
その上で業務面では、流通環境の変化を背景にしたコスト改革や業務改革を促し、成長事業を中心とした新たな業務モデルにも対応していかなければなりません。
システム面では、業務とシステムの不整合状態によるミスの誘発やマスターデータの精度の低下を防ぎ経営判断に役立てる各種のレポートを提供できるような仕組みが求められていました。
「RFP発行前に利用者からの要望調査を行い、業務とシステムの両面で約150の改善課題を取りまとめ、それをクリアできるシステム要件の策定を行いました」(関口氏)
JSOLの提案は、Biz∫販売、販促、MDMの3つのパッケージと業界の商習慣に対応したJSOL独自の「食品業界向けテンプレート」を組み合わせたものでした。それらを活用してシステム開発した方が、スクラッチ開発よりもリスクが小さく、効率性も高いと考えたのです。また、お客さまが必要とされる独自の機能を個別に開発して組み込み、標準テンプレートと個別競争力の両方のよさを取り込んだシステムとしました。
関口氏によれば、スクラッチ開発を提案した競合社もあったとのことですが、「パッケージとテンプレートをベースにする開発は効率的で安心感がありました。結果的には検討メンバーの全員一致でJSOLによるBiz∫での構築が決まりました。一方で、詳細な個別取引条件などの旧システムに組み込まれていて、担当者が把握しきれていない可能性のある仕様を確実に拾い上げる方法については議論を重ねました。解析ツールの活用も検討しましたが、最終的にはJSOLが、旧システムのプログラムを丁寧に追いかけ、照合テストで洗い出すという地道な作業のご提案になりました」
情報システム子会社NSP社への保守引継ぎ見据えた役割分担と協業
日清オイリオグループでは、システムの保守・運用は、グループ内の情報システム会社の株式会社NSPが担当しています。従って、今回のプロジェクトでは構築することだけではなく、NSPへの保守・運用引継ぎを円滑に行うことも重要なポイントでした。
そのため、JSOLの開発チームに早くからNSPのメンバーが参画し、スキルトランスファーができる体制を構築しました。
また、プロジェクトでは、JSOLが独自に開発したBiz∫MDMへ、商品、帳合、取引先、社員、出荷地、手数料などさまざまなマスターデータを移行しています。このMDMの開発の半分以上をNSPが担い、画面を自動生成するツールなどを活用しながら、習熟度を高めていきました。
JSOLのPMを務めた米田亨は、「結果的に、システムの本番稼働3か月後にはシステム運用の主担当をNSPに引き継ぎ、9か月後にはJSOL側の常設保守体制を解消することができました。このような短期間で引継ぎができたことは、システムが安定的に稼働していることはもちろん、NSPメンバーの習熟によるところが大きいと思います」と語ります。
新システムについてユーザーはどのように評価しているのでしょうか。
日清オイリオグループ東京支店で受注事務を担当する永田千春氏は、「なによりもシステムが一つになり、一つのもので各種のデータ処理を進められる利便性の向上は大変にありがたいです」と語ります。
例えば賞味期限別の在庫数を見る時も、かつては受注数と在庫数が別の画面に分かれていたために一手間増え、それが指示ミスを誘発する一因になっていました。
その上で、「受注に関しては、過去の受注データを再利用して新しい受注データを作成できる「受注テンプレート機能」が受注業務の生産性向上に役立っています。入力時間の大幅短縮や手入力だったマスター情報の複写の入力ミスがなくなりました。これには副次的な効果もあり、例えば休暇を取るために他のスタッフに仕事を任せても、お客さまの帳合や出荷商品を間違えるなどのミスがなくなりました」と語ります。
そして永田氏が指摘するのが、「JSOLのスタッフの皆さんの業界についての理解の深さ」です。プロジェクトの推進では、業務別にいくつかの分科会が随時開かれ、要件を定義していきました。
「プロジェクトがキックオフしたのは2014年5月でしたが、それ以前からの食品業界についての見識はもちろん、あっという間に当社、油脂業界独特の事業別の商慣行や特性の違いを理解され、社内用語を苦もなく使っていました。開発スタッフの方々に細かに説明しなくても話が進められました」
関口氏からは、JSOLスタッフのプロジェクト遂行能力に高い評価をいただきました。それが端的に示されたのが照合テストや稼働リハーサルでした。
JSOLの米田PMは、「従前のシステムからのリプレースでは、取引先に影響の出る金額計算や請求書など、各種の伝票出力はそれまでの仕様を確実に再現する必要があります。仕様書に残らない細かな取引先別の個別ロジックなどはユーザーヒアリングでは拾いきれないため、新しいシステムとの照合テストが非常に重要な作業になります」と説明します。
そこで約半年間にわたって照合テストを実施してロジックの取り漏れ防止やマスターの精度の向上に取り組みました。すべてが順調に進んだ訳ではなく、次々に課題が発生し、ぎりぎりまで調整が続きました。またNSPとは、稼働リハーサルを当初予定の3回から6回に増やして実施することとなり、課題や改善点をお互いに共有し進めました。
商慣行理解とプロジェクト遂行力が、創業2世紀の持続的な成長の基盤を創る
日清オイリオグループにおける基幹システム最適化プロジェクトは、約2年をかけて実現しました。
関口氏は、「最後の追い込みが凄かった」と笑いながら振り返ります。また、「稼働直前には、東京支店のプロジェクトメンバーからの提案で、ユーザーを対象にした運用リハーサルを行いました。これがユーザーのシステムへの理解を深め、稼働直後には起こり得た混乱を軽減できたのではないかと思っています」と振り返ります。
一方、米田PMはプロジェクトを振り返り、「JSOLが蓄積している食品業界についての知見、システムリプレースへの対応、細かなユーザインタフェースの要件への対応などで、JSOLの力を存分に発揮できたと思います。また、最初の要件定義の局面では、他社での対応事例やテンプレートをベンチマーク的に用いることで効率的に作業を進められました。対外影響を出さないための、従前のシステムと新しいシステムとの照合テストでも、これまでの知見や導入方法論 を生かせました」と語ります。
米田PMはさらに、ユーザーインタフェースの高い要件レベルへの対応にも力を注いだと言います。
「平日の午前中という限られた時間内に受注業務を運営していることから、受注や出荷指示などのクリティカルな画面では、特にユーザーインタフェースと応答性能に関する要求レベルが高く、これは本当に印象的でもありました。Biz∫の製造元であるNTTデータ・ビズインテグラルにも協力を仰ぎ、機能面、非機能面の両面で最大限に取り得る対策を講じました」
本番稼働後、プロジェクトを共に担ってきた日清オイリオグループの情報システム部の皆さんからビデオレターを頂戴しました。「いろいろ無理を言ました」「一時期はダメかなと思ったが、終わり良ければすべて良しだね」等々。厳しい言葉もありますが、どの方もプロジェクトの達成感に満ちていました。
米田PMは、「ビデオレターをいただき、JSOLのメンバー一同、プロジェクト期間中の苦労が報われた思いでいます」と語ります。
日清オイリオグループは2017年3月、創業110周年を迎えました。また17年度からは新しい中期経営計画がスタートします。創業第2世紀の持続的な成長を支える基盤としてBiz∫が活躍することになります。
関口氏は、「3社が経営統合した際に構築した基幹システムの更新は、JSOLが担ってくれた本プロジェクトで一応の区切りを迎えます。業界事情に精通した使い勝手の良いシステムを構築していただき、それを意味あるものにするために、今後は私たちの取り組みが問われますね」と語ってくれました。
会社概要
会社名 | 日清オイリオグループ株式会社 The Nisshin OilliO Group, Ltd. |
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所在地 | 東京都中央区 |
設立 | 1907(明治40)年 |
事業内容 | 油脂・油糧事業、加工油脂事業、ヘルシーフーズ事業、ファインケミカル事業 等 |
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