全社で取り組み自分たちでやりとげた基幹業務システムの再構築
目次
会社概要
御社は、産業ガスを中心に事業展開されていますが、まずは、親会社であるエア・ウォーター様と御社の発足についてご紹介していただけますか。
前田様
1993年に北海道を基盤とする「ほくさん」と関西を基盤とする「大同酸素」が合併して、「大同ほくさん」となり、全国をカバーする産業ガス供給会社が生まれました。その後、2000年に大同ほくさんと「共同酸素」が合併して、「エア・ウォーター」が発足しました。これによって、全国に産業ガスを供給すると同時に、複数の高炉向け大型オンサイトガス供給を担うまでになりました。
産業ガスは、空気から酸素や窒素を分離し、お客さまに供給します。そのため、分離設備や貯蔵設備、供給のための配管設備、運搬するローリー車などが必要になります。これらエンジニアリングを担う部門が2001年にエア・ウォーターから分社独立して、「エア・ウォーター・プラントエンジニアリング(AWP)」を設立しました。
エンジニアリング株式会社
管理部 主査
前田 陽一朗 様
では、次に取り組まれている事業についてお伺いします。まず、エア・ウォーターグループ全体の事業についてお聞かせください。
久郷様
産業ガス、医療用ガスから始まった当社の事業は、エネルギー、農業・食品、ケミカル、物流、エアゾール、海水事業へと事業領域を広げ、社名の通り「空気や水のように」世の中に欠かせない役割を担うようになりました。そして現在240余社からなるグループ企業群が、事業環境の変化に強い「全天候型経営」と事業間シナジーを最大限に高める「ねずみの集団経営」という特長ある二つの経営戦略の推進により、2020年度売上高1兆円を目指しています。
グループの中で御社の事業についてお聞かせください。
久郷様
2001年の分社時は産業ガス用設備の設計を主としていましたが、2005年に製作・施工を主たる事業としていた「エア・ウォーター・エンジニアリング」と合併、2015年に「エア・ウォーター・メンテナンス」からメンテナンス事業の移管を受けました。その結果、現在は設計、施工、メンテナンスまでを一貫して行う企業になり、従業員も分社時の5倍程度にまで増えました。
その産業ガスですが、具体的な利用例としてはどのようなものでしょうか。
前田様
産業ガスは、一般の方々が気付かないさまざまな所で使われています。例えば、クリーンな環境が必要な半導体製造工場では高純度窒素を大量に使っています。製鉄所では、鉄を溶かす工程などに酸素を使っています。また、消費者に身近なものでは、ポテトチップスの酸化防止に窒素ガスが封入されています。他にも飲食店では生ビール用のビールサーバーで炭酸ガスが使われています。
エア・ウォーター・プラント
エンジニアリング株式会社
取締役 管理部 部長 兼
安全衛生管理室 副室長
久郷 惠子 様
導入背景
このたび御社では、新基幹業務システムの立ち上げに取り組まれましたが、その経緯を教えてください。
久郷様
エア・ウォーターは、2000年の大同ほくさんと共同酸素の合併後、両社の基幹業務システムを並行稼働する期間を経て、会計システムは大同ほくさんの基幹業務システムに統合することが決まっていました。
当社は、2001年にエア・ウォーターから分社した時に、会計システムをどうするか検討を迫られました。大同ほくさんの総合原価管理をメインとしたシステムと、共同酸素が個別原価管理を採用したシステムの選択肢から、個別原価管理が可能かつ当社が求める購買の機能(Web購買)を有した共同酸素の会計システムが当社のエンジニアリング業に適していると判断し、採用を決定しました。その後、15年近く不足していた機能を追加開発で補いながら使用してきました。
しかし、OSのライフサイクルが終了し、保守も限界を迎えることが目に見えていました。大規模な改修も考えましたが、建設業(個別原価管理)に特化したパッケージソフトを選択した方が業界特有の思想が標準装備されていることや、会計基準・税制改正などへのタイムリーな対応、OSバージョンアップにも迅速に対応できることなどから、改修ではなく、刷新した方がよいと判断しました。
長年利用されてきたシステムの保守や事業を取り巻く環境などの事情で再構築を決断されたのですね。
久郷様
エア・ウォーターをはじめ、グループ会社の多くはエンジニアリング業ではありませんから、個別原価管理は必要ありません。しかし、当社では工事ごとの個別原価管理は必須で、それ以外にも顧客情報や工事情報の管理が必要になるのです。ところが今までのシステムでも、案件の販売価格と原価実績の管理のみで、前述の顧客情報や工事情報は一元的に管理できていませんでした。そこで、当社と同じ業種で使われていて、個別原価管理と工事情報管理を効率的に行えるシステムがあれば有益だろうということで、パッケージソフトの選定に着手したのです。
「Biz∫Project-Space」選定の理由
基幹業務システムとして、Biz∫Project-Spaceを選定した経緯についてお聞かせください。
久郷様
2015年に、NTTデータエンジニアリングシステムズ(NDES)も含めた4社にプレゼンテーションをしてもらいました。その時の当社の質問に対して、NDESは間髪を入れずに、「これは実現できますが、これはできません」「実現するには、この方法を提案します」と答えてくれました。それまで付き合いのなかったNDESでしたが、その対応を見て「これならいけそうだ」と直感したのです。
最終的にはNDESともう1社の2社に絞り込んで、細かく検討し、導入パッケージを決めることにしました。経営側としては、正しい結果が得られれば、どのシステムでもよいわけです。しかし、重要なのは各業務で使う側です。使い手が納得するシステムを導入したいと考えました。それで、キーパーソンである調達の徳田、会計の原塚、販売(工事管理)の越澤の3人による判断を重視したいと思い、改めて2社のパッケージのデモンストレーションを見て検討しました。
Biz∫Project-Spaceを採用していただいた決め手は、どこにあったのでしょうか。
久郷様
それは、キーパーソンの3人全員が、Biz∫Project-Spaceでやりたいと言ったからです。さらに、当社がBiz∫Project-Spaceの第1号ユーザーになると伺い、当社の希望を盛り込んでもらえるのではと考えました
特に絶対に必要な要件が購買管理ワークフローとWeb購買の仕組みだったのですが、そのことに対してNDESは明確に両方ともやりますと言ってくれました。さらに、今までできていなかった工事情報と会計システムの連動とデータの統合もNDESは実現できると断言してくれたので、Biz∫Project-Spaceに決めました。
では、次に取り組まれている事業についてお伺いします。まず、エア・ウォーターグループ全体の事業についてお聞かせください。
久郷様
産業ガス、医療用ガスから始まった当社の事業は、エネルギー、農業・食品、ケミカル、物流、エアゾール、海水事業へと事業領域を広げ、社名の通り「空気や水のように」世の中に欠かせない役割を担うようになりました。そして現在240余社からなるグループ企業群が、事業環境の変化に強い「全天候型経営」と事業間シナジーを最大限に高める「ねずみの集団経営」という特長ある二つの経営戦略の推進により、2020年度売上高1兆円を目指しています。
プロジェクトの状況
実際には、どのように構築を進められましたか。当時の状況を教えてください。
久郷様
2015年7月に私が導入プロジェクトのリーダーとなりました。そして、プロジェクトのメンバーは毎日、伝票確認や請求書発行、工事管理の業務をしている担当者が中心になった方がよいと考え、システムの選定に関わった原塚、徳田、越澤に引き続き加わってもらいました。さらに、営業部門と設計部門、メンテナンス部門からメンバーを加えた13名の体制でプロジェクトを開始しました。ユーザーとしては、購買業務が最も多く、とりまとめも大変です。設計者が購買請求を行い、上長が承認、それを調達部門が受け付けて発注するので、購買の全体を徳田に調整してもらうことにしました。
エア・ウォーター・プラント
エンジニアリング株式会社
調達部 係長
徳田 淳子 様
徳田様
プロジェクトの早い段階で設計者にBiz∫Project-Spaceを操作して意見を出してもらいました。皆からは、多種多様な意見が出るので、それを必要なものと不必要なものに振り分けて、システムに反映させる意見を絞りました。
久郷様
いろいろな意見を取り入れて拡張機能を追加すると費用が増すため、私たちの業務をできるだけBiz∫Project-Spaceに合わせることを基本方針にして仕様を詰めていきました。
同時に購買、会計、工事管理の仕様固めを進められたのですか。
徳田様
そうです。ほぼ同時に標準のBiz∫Project-Spaceを操作しながら、各部門から意見を出してもらいました。
久郷様
工事情報管理は営業部が中心になって、工事情報の管理の在り方や入力方法を軸に、越澤を中心にして意見を出してもらいました。
会計は業務担当が入力し、管理部門が締めるため、限られたユーザーの意見をまとめることは、それほど難しくありませんでした。
購買や工事情報管理については、業務を取り仕切ってきた力のある担当者なので、設計部門や営業部門をまとめることができたのだと思います。
徳田様
Biz∫Project-Spaceの購買については、旧システムに付加機能が付いたという感じでしたので、操作する上でBiz∫Project-Spaceに違和感はありませんでした。2001年に旧システムを使い始めた時は、いろいろなところから使いづらいと苦情を言われましたが、今回は問い合わせも少なく進められました。
導入効果と気づき
新基幹業務システムに、どのような効果を期待されていましたか。
久郷様
旧システムでの工事情報管理は本当に最低限の情報しかなく、不足している情報を別のシステムに連携させて、売り上げに計上した後、Excelの表で管理していました。つまり、一つの案件を受注すると、さまざまなシステムに情報を入力して、別々に管理するという面倒な作業をしていたので、この作業がとても大変でした。そこで工事情報管理の機能を一つにまとめることにより、入力を簡素化し、タイムリーにすることで効率化していく、それが新システムの最大の目的でした。
エア・ウォーター・プラント
エンジニアリング株式会社
マーケティング事業部 営業部
西日本事業所 主任
越澤 和加子 様
越澤様
別々に管理していた機能を一つにすることで得られる効果は大きいですが、さまざまなところから情報を集めて移行データを作らなければなりませんでした。その作業に大変苦労しました。
基幹業務システムを再構築する際、データ移行はどの企業でも苦労しています。旧システムのデータを新システムに合わせて網羅してつなげることは、とても難しい作業です。
久郷様
そうだと思います。データ移行は初めてのことでしたので、何が不要で、何が必要なのかがよく分からず非常に迷いました。日々、動いているデータを正しく移行しなければいけないため、予想以上に大変でした。
長期にわたるプロジェクトでは、最初と最後では考え方も随分変わってきたのではないかと思います。そのあたりはどうでしょうか。
久郷様
そういうこともありました。最初に徳田がデモ機にデータを入力したら、問題なく正しい結果が出力できました。それで次の段階に進んで、要件定義したデータを持ってきて入力してみたら、少し異なる結果になったのです。机上で仕様を決めて、それでいけそうだと実際にデータを入力してみると、この項目はこちら側にあったらよかったとか、このボタンはこちら側にある方がよかったとか、入力したはずのデータが次の入力画面につながらないとか、さまざまな問題が発生しました。
Biz∫Project-Spaceのパッケージとしての仕様があるので、基本はそれに合わせるという方針でやってきました。ところが、プロジェクト終盤の2016年夏頃になって、長年業務をやってきている当社のやり方を残さないと業務が回らないという部分が出てきました。
このようにプロジェクトの終盤で問題が出てきたのは、最初の要件定義段階で再構築するシステムについて、しっかりとしたイメージが持てなかったことに原因があると考えています。
それはマイホームを建て、住んでみると「こうすればよかった」と反省するように、後から考えると、最初の段階で確認していたら、もっと楽にできたという部分はあちこちにあります。プロジェクトのスタート段階では、システムを再構築することの大変さを十分に理解していたとはいえません。それがプロジェクト進行に伴いその大変さに気が付き、2016年夏頃は本当に計画通り10月からサービスインできるのかと不安に思うこともしばしばありました。
徳田様
システムのことは素人ということもあり、システムの構築時にあまり深く考えなかったことが、導入後にその意味が分かることも多く、もう少し考えて構築すればよかったと思うことがあります。
これまでに、システムの再構築をした経験はお持ちでしたか。
久郷様
私にとって、今回がシステム構築3部作のゴールと考えています。10年ほど前に技術文書の管理システムを自社でカスタマイズしたソフトからパッケージに移行しました。次に、管理部門で初めてプロジェクトチームを組んで、Excelで入力していた就業・工数管理をパッケージシステム化しました。それが終わったので、今回は本丸の基幹業務システムの再構築に取り組みました。購買や販売などほかの部門も交えて、全社的に取り組んだのは初めての経験です。
この経験から御社のプロジェクトメンバーの方々は、一回りも二回りも成長したという印象を受けました。実際はいかがでしょうか。
久郷様
中心になった3人は皆、大きく成長しました。サブリーダーだった原塚は、プロジェクトリーダーとしての役割を担えるまでになったと思います。プロジェクトのスタートからサービスインまでのチェックポイントで、この仕様ではダメだとか、費用との兼ね合いを考えながらやり直すべきかなどの判断を原塚が中心となって、徳田、越澤の3人で行いました。
3人とも本当によくやったと思いますし、その頑張りがなければ、このプロジェクトは計画通り完遂できませんでした。
エア・ウォーター・プラント
エンジニアリング株式会社
管理部 係長
原塚 雅嗣 様
原塚様
データ移行には少し反省があります。できるだけ多くの情報を移行したいという気持ちが先走って、とにかく情報を集めようとしました。今にして思えば、不安がそうさせたのかもしれませんが、当時はそこまで考えている余裕がありませんでした。
久郷様
当社は今までシステム開発に大きな投資をしたことがありませんでした。今回、3人をはじめ、プロジェクトメンバーはこんなに費用がかかるのかと思ったことでしょう。その中で、何としてもこのシステムに魂を入れないといけないという危機感と責任感を強烈に持ったと思います。それが必ずプロジェクトを成功させるという原動力につながったのでしょう。
皆さん、ご自身の中で成長したと思うことがあれば、どんなことでもよいのでお話しください。
前田様
印象的だったのは3人が多くの社員を巻き込んで動いていたことです。購買はユーザーが何百人といる中で、問題をつぶしながらサービスインしていきましたし、販売もいくつもの仕組みがある中で、システムを統合したわけです。事業移管で新しい社員が入ってきている中で、その人たちも巻き込んで取り組んでいったので、巻き込む力を皆が持てるようになりました。
原塚様
自分で考えてやりたいことをやろうと、その通り自由にできました。もともと、会計を担当していて、社外の人と話す機会があまりないこともあり、自分の思いを伝える難しさを日々感じていました。今回、システムという同じ土俵でNDESの皆さんとコミュニケーションが図れたので、思いの伝え方も含めて学ぶことが多くありました。
徳田様
自分が一番使いやすいシステムにできました。Web購買の部分は、旧システムを改造しようという話もありましたが、すぐにお断りして新しく作ることをお願いしました。その結果、苦労もありましたが、今は使いやすいシステムに満足しています。
越澤様
当社はものづくりの会社ですが、営業事務をしていると、ものを作り上げていくという達成感がありませんでした。今回プロジェクトに加わって、このシステムの構築で、ものを作り上げたという大きな達成感を得ることができました。
今後の展望
最後に今後の展開やNDESへの期待などがありましたら、お聞かせください。
久郷様
次は、予算と実績について明確にしていきたいので、早い時期に予算実績管理機能の実装に取り組む必要があると考えています。
今回、私も女性、NDESのプロジェクトマネージャーも、購買、販売のキーパーソンも女性で、女性が中心となり活躍したプロジェクトでした。それで、お互いに言いたいことを言い合う、ひと味違ったプロジェクトになりました。その成果として基幹業務システムの一本化が実現でき、情報インプットの簡素化および受注情報の一元管理、そして、多彩なアウトプットが可能になりました。さらに最新かつ最適なハードウエア・ソフトウエアで、念願のWeb環境にてシステムを運用できるようになりました。
今後、NDESにはBiz∫Project-Spaceのユーザーを増やしていただき、パッケージとして長く提供してほしいと願っています。そして、Biz∫Project-Spaceのユーザー会を開催してユーザー同士の交流ができるようになってほしいと思います。
エア・ウォーター・プラントエンジニアリング様のように、Biz∫Project-Spaceを多くのお客さまにご採用いただけるよう営業、技術ともにこれまで以上に努力いたします。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
会社概要
会社名 | エア・ウォーター・プラントエンジニアリング株式会社 |
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所在地 | 大阪府堺市西区築港新町2丁6番地40 |
設立 | 大阪府堺市西区築港新町2丁6番地40 |
資本金 | 300百万円 |
事業内容 | ●絶対零度に近い温度のコントロール技術を活用した各種低温機器・設備などの・製造 ●高真空機器、高真空配管などの開発 ●環境負荷を低減する技術・工法の開発 ●環境負荷の少ないLPG、LNGヘの取り組み |
(注)本文書は、「人とシステム」第85号を再編集したものです。本事例に記載の情報は2017年4月時点のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください
■Project-Spaceの詳細情報はこちらからご確認ください。
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