IT/情報通信業のプロジェクト採算管理の仕組みをERPに統合して実現

IT/情報通信業において、特に新規分野の事業や案件にチャレンジする際にその見通しを立てることは困難であり、多くの企業が予実管理や内部統制に関する課題を抱えています。また、分断された基幹システムもスピーディな経営を実現する上での阻害要因となっています。これらの課題を解決するためには、プロジェクト採算管理に関するすべてのプロセスを一気通貫で実施することができるシステム基盤を導入し活用することが必要です。

IT/情報通信業界向けERP(統合基幹業務システム)

IT/情報通信業が抱える3つの課題

一口にIT/情報通信業といっても業態は多種多様です。人材派遣を生業としている企業もあれば、大型のシステム案件を受託開発している企業、上流工程のコンサルティングサービスに注力している企業もあります。ただ、このいずれの業態においても共通して生じやすい課題として以下の3つが挙げられます。

1.予算管理の課題

IT/情報通信業では多くの場合、継続案件については精度の高い計画を立てることができますが、一方で新しい事業領域や商材にチャレンジする際の計画は粗くなりがちです。予算は立てたものの、実際にどのセグメントで、どういう経緯で受注できたのか、その案件の採算性はどうだったのかといった戦略的な部分の予実管理に課題を抱えている企業が少なくありません。

2.様々な取引パターンへの対応における課題

IIT/情報通信業では取り扱う取引パターンが多岐にわたり、それをシステムで管理する上で様々な課題が発生します。

例えば請負契約なのか派遣契約なのか、あるいは新規案件なのか継続案件なのか、いずれのケースにおいても内部統制を図るために適切な見積りや稟議の決裁をとり、証跡として残さなければなりません。しかし下請法や派遣法との絡みもあり、案件を正式に受注する前に協力会社に発注しなければならないなど、顧客に対する受注証跡と協力会社に対する発注証跡にずれが生じるケースがよくあります。そこで一般的に行われているのが、先行着手や仮受注、内示といった形による業務処理です。この受注プロセスに関する証跡や履歴をシステムでしっかり一元管理する必要があります。

上記以外にも、サブスクリプション型のビジネスにおける売上額の算定・計上方法や、取引先に対する与信管理など、多彩な取引パターンと、それに伴う複雑なシステム化要件に対応する必要があります。

3.混在したシステム環境の課題

一方、自社で使用しているシステムの観点からも課題が散見されます。IT/情報通信業の場合、社内で利用するシステムは、業務面の要件に沿って選ばれることはもちろんですが、自らが商材として担いでいるソフトウェア製品を自社利用する場合もあることから、単一の基盤上で基幹システムを構築している企業はそれほど多くありません。その結果としてスクラッチで作られたシステムや複数のパッケージが混在しており、法改正や組織改正が行われるたびにプログラムの改修やバージョンアップなどの対応に重い負担が発生しています。

課題解決の基本的なアプローチ

これらの課題を解決するためには次のようなアプローチが基本となります。

1点目の予実管理に関しては、見込み顧客から引き合いが寄せられた段階からプロスペクト登録を行い、プロジェクト計画を作成し、受注登録から売上計上、経費計上、最終的な原価計算にいたるまでプロジェクト採算管理を一気通貫で実施することができるシステム基盤を導入・活用することが必要です。年度初めに立案した予算に対して「実績+未来の計画を踏まえた見通し」を予算対比で管理することが可能です。

なお、プロスペクト登録について、例えば顧客の業種や引き合いが寄せられた製品などあらかじめさまざまな分析軸を設定しておき、セグメントごとに予実管理が行える仕組みを導入することも重要なポイントとなります。

2点目の内部統制に関しては、先に述べたような先行着手や仮受注といった受注ステータスおよび検収エビデンスの取得を一元的に管理する必要があります。J-SOX法(財務報告に係る内部統制報告制度)の監査に対応した機能群を標準で備えたシステム基盤を導入・活用することが、最も確実な課題解決となるでしょう。

特にIT/情報通信業において、2021年4月より施行された新収益認識基準や今後も頻繁に行われる法改正にスムーズに対応するためにも、内部統制機能のタイムリーなアップデートが行われるシステム基盤を採用することをおすすめします。

そして3点目の分断されたシステムの問題に関しては、すべてのシステム間でマスタを一元管理することで有機的な統合を図ります。

プロジェクト採算管理の機能をテンプレート化して提供

NTTデータビズインテグラルが提供するERPパッケージ「Biz∫会計」では、上記のアプローチに基づく仕組みをテンプレート化した「プロジェクト採算管理テンプレート」を用意しているため、IT/情報通信業が抱えている課題を解消する基幹システムを素早く構築することができます。

プロジェクト採算管理テンプレートは、その名のとおりプロジェクト採算管理に深く関わるプロジェクト計画、実績把握、要員管理を網羅的にサポートするもので、同テンプレートに用意されているプロジェクト採算シミュレータを用いてプロスペクト情報も一元管理可能です。

これにより、例えば要員管理であれば、プロジェクト採算シミュレータの人件費計画で入力した要員計画を部門単位で管理し、空き工数や超過工数を把握することが可能となります。従来までExcelなどを用いて行っていた進行中の案件の要員変更も時間外計画の見直しもBiz∫の画面からシームレスに行えるようになります。

さらに稼働実績入力後は予定と実績を比較するほか、「部門別」「プロジェクト管理組織別」「プロジェクト別」「個人別」といった異なる切り口での検索し、部門別から社員個別、プロジェクト別へとドリルダウンすることができます。

IT/情報通信業向けERPテンプレートの全体概要図
プロジェクト採算管理に関わる計画、実績把握、要員管理をサポートするテンプレートの全体概要

また業績管理については、予算・見通・実績のリアルタイム集計、用途に応じた日次集計結果をBIツールの定型クエリとして用意しています。業績管理帳票のユーザーはこの定型クエリをコピーし、独自の抽出条件・集計条件を設定した非定型クエリを各自で登録するといった運用を行うことができます。

IT/情報通信業向けERPの業績管理機能
業績管理機能によってグループ全社・部門毎の採算が予算・見通の比較で把握可能

Biz∫会計のメリットをプロジェクト採算管理テンプレートが補完

こうした仕組みは、原価計算のエンジンを標準搭載したBiz∫会計ならではの強みがあり、前述した新収益認識基準など新たな法改正が行われた際にも迅速にパッチが提供されます。これによりプログラム改修やメンテナンスに多大な工数やコストを費やすことなく、コンプライアンス要件を満たしたシステムの安定した運用を続けることができます。加えてBiz∫シリーズ自体が共通基盤であるイントラマート上で動作しているため、すべてのシステム間でマスタの一元管理が可能です。こうしたBiz∫会計のメリットをプロジェクト採算管理テンプレートが補完し、さらに強化するのです。

さらにBiz∫会計がグループ経営に非常に適したパッケージであることも、IT/情報通信業にとって有利に働きます。実際、IT/情報通信業ではM&Aが頻繁に行われており、グループ会社が拡大していくケースはよくあります。業績管理に対してもともと違った考え方を持っていたグループ企業のシステムを、Biz∫会計およびプロジェクト採算管理テンプレートを基盤として統合することで、間接コストの大幅な削減を実現します。